ブービエ・デ・フランダースはベルギーとフランスの国境地帯フランドル地方を中心に古くから飼育されていた牧畜犬である。イギリスの女流作家ウィーダの小説「フランダースの犬」のパトラッシュとして一躍有名になった。
ブービエ・デ・フランダースは16世紀前後に、支配者であるスペイン人がフランドル地方に持ち込んだ犬が起源と考えられており、グリフォンの血を引く犬種である。 犬名のブービエは「牛追い犬」の意である。 ベルギーには多くの「ブービエ」が存在したがほとんどの種が絶滅し、ブービエ・デ・フランダースがベルギーのブービエの唯一の生き残りである。
ブービェ・デ・フランダースはベルギー、フランスではポピュラーな犬種となり、急速に人気を高めていったが、第１次世界大戦勃発によりブービエ・デ・フランダースはフランス軍の医療物資を運ぶ医療犬として戦場を走った。この戦争でブービエ・デ・フランダースの故郷と言われた地方は焼け野と化し、多くの犬が失われ、犬種存続の危機に陥る。その中で生き残った数頭の犬により再生されたのが現在に伝わるブービエである。
使役用途の犬の中で、特に牧畜犬は能力本位で作出される事が常であるため、サイズにはかなりの幅があり、大型のものは荷車曵きとして使われた。 彼等の飼い主は家畜商人や農夫であり、血統書付きの純粋種の繁殖に興味があったとは考えられない。 近年ブービエ・デ・フランダースのスタンダードが制定されるまでは毛色やサイズに統一性がなく、異なる多くのタイプが混在していた。 ブービエに限らず現役の使役犬種をドッグショーに出陳する場面では、サイズや被毛色などでクリアしなければならない問題も多い。 ブービエ・デ・フランダースも他の犬種と同様にヨーロッパやアメリカに渡り、ショー的な視点で評価されるようになり、洗練されて行った。 しかし現在でもベルギーの熱心なブービエ・デ・フランダースのブリーダーはこの犬種が古い時代の作業犬であった事を忘れる事はない。 彼等はブービエ・デ・フランダースの古い特性の維持を望んで作出を続けている。 ベルギー国内ではブービエ・デ・フランダースが警察犬や盲導犬、救護犬としてその能力によって賞を受ける事はあっても、ドッグショーでチャンピオンの称号を受ける事はない。 粗く硬い濃色のコートに乱れ髪のような眉毛、口髭、顎髭があり、外見は荒々しく近寄りがたい印象を受ける。 アニメや漫画に登場するパトラッシュが実際のブービエ・デ・フランダースの外貌と大きく異なる理由は、ネロやパトラッシュの友人たる少年、少女への配慮によるものと推察する。

飼い主にとても忠実で、穏やか、家族と遊ぶことが大好きな性格で、小さなお子様にも愛情深く接する。体が大きい分、体力もあり、非常に活発である。 基本的には穏やかな性格だが、現在では農場の番犬や警察犬としても活躍しているほど、判断力や作業能力がとても高く、勇敢な一面もある。警察犬らしく警戒心が強い一面もあるので、時に外的かもしれないと感じてしまった他人に、攻撃的な態度をとることがある。そのためしつけは、幼い頃からとても重要になる。

グレー

グレー・ブリンドル

グレー(ブラック・オーバーレイ)

豊富なダブルコート。粗く堅い感触で、ドライでくすんだ色。長すぎず短すぎない(6㎝前後)。ウーリーやカーリーではなく、いくぶんに乱れ毛である。シルキー(絹糸状)の被毛は重大な欠点。
ブラックの単色も認められる。