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先天性異常とは?

先天性異常は、生まれつき体形や機能に異常があることをいいます。
異常の多くは、発生や発育の異常から来るものですが、一部に遺伝子由来と考えられるものもあります。
これらの異常は胎児が生まれてくる確率は1%〜2%といわれていますが、まだまだ研究調査の段階にあります。
胎児が発育していく過程で母犬が病気にかかり、やむをえず薬物を服用したりすることで、胎児に何らかの影響があり、異常をきたすこともあります。
生まれてきた子犬を見て、異常がまったく認められないかどうかは、すぐには判らないことがほとんどであり成長するにしたがって異常が出てくる病気もありますのでご注意ください。

遺伝性疾患とは?

先天性の異常の中でも、同じ異常が受け継がれていけば、それは遺伝病として調べていく必要があります。
もしそれが遺伝性疾患となれば、治療はもとより、繁殖の制限をしていかなければなりません。
優秀な犬を産ませることは、単に外観や気質だけではなく、このような遺伝性疾患の排除にもつながります。
遺伝性疾患を調査して行く上で、血統の表現型を見たり(家計調査)、その犬の遺伝子型(形質)を調べなければなりません。
イギリスやアメリカでは、個体識別と同時に遺伝性疾患を減少させるために、遺伝子検査のデータを登録する活動が始まっています。
現在ではまだ数種類の疾患しか検査できないのが現状で、早期の実現が望まれます。とはいえ、今後、犬の遺伝子検査が充実してきても、解決しない異常も少なくはありません。
これは多困子性遺伝といい、複数の遺伝子形質と、環境因子が組み合わさって発症するタイプのです。まだしばらくの間は、表現型を主体に診断し、適切な繁殖によって遺伝性疾患をなくしていかなければなりません。

さまざまな遺伝性疾患

股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)HD
〜成長期における四肢の疾患の中では古くから知られ、大型犬に発症しやすいとされている病気です。
四肢の関節は、骨膜から移行した強い靭帯構造の関節液で満たされています。股関節を形成する骨格は、骨盤の寛骨という骨と、ひざから股にかけての大腿骨(だいたいこつ)です。
寛骨と関節部位はいわば受け皿で、臼のようになっているので寛骨臼といい、大腿骨の関節部位は頭の先のように半円形になっているので大腿骨頭といいます。
大腿骨の先端の大腿骨頭は、寛骨臼の中にすっぽりとはまり込み、スムーズな動きで、後肢からの推進力を背腰部に伝える動きをします。
股関節形成不全は、成長期にこの関節の緩みが起こり、骨軟骨症から関節の変形を生じてくる病気です。寛骨臼が浅くなり、大腿骨頭が 平になるような変形や、緩みの程度によっては脱臼を起こすことになります。
このような形成不全を起こしてしまった関節は、正常な形に治ることはなく、生涯、関節の変形が持続したままで、慢性関節炎を伴い、痛みを発症することも珍しくはありません。
前肢に重心がかかり腰を大きく振って歩く状態は、股関節の亜脱臼が考えられ、立ち上がる動作がぎこちなかったり活発な運動をしなくなったり、一度獣医師さんの診断を受けてください。
原因については、遺伝性の疾患とされていますが、明確には解明されていません。成長期の過剰な体重と、激しい運動がきっかけとなることも言われています。
股関節形成不全と診断されたら、歩様のふらつきの程度、疼痛の有無、レントゲン検査所見の評価によって、治療方針が決定されます。温存的療法で患肢の機能を改善する場合は、痛みをやわらげる薬物療法を中心に、適正体重の維持、運動制限などをしていくことになります。
補助的に栄養食品として販売されている、グロコサミン、コンドロイチン、キチンキトサンなどが関節の強化に有効と言われています。
外科的療法により患肢の機能を再建する場合、体重の軽い犬種に適用されます大腿骨頭切除術によって関節形成するやり方や、もう一つは、犬用の人工股関節を使用した、股関節全置換術です。大手術となりますので、機能の回復の程度や治療期間とその経費について、よく説明を受け行ってください。

肘関節形成不全(ちゅうかんせつけいせいふぜん)ED
成長期での四肢の疾患の中で股関節形成不全に次いで多い、前肢の病気です。
肘関節の発育不全により痛みが生じる病気の総称です。肘関節は、「上腕骨(じょうわんこつ)」、「橈骨(とうこつ)」、「尺骨(しゃっこつ)」の3本の骨で形成されていて、これらの骨の異常により発症します。大型犬や超大型犬に多く見られ、前肢の跛行(はこう)の原因となります。
またホルモンの異常、ビタミンA、D、Cの欠乏、カルシウムの吸収障害等の要因も関わっていると考えられます。骨の成長の為にカルシウムを過剰に投与することはかえって形成不全の原因になります。
治療は、ケージレスト(ケージの中で安静にしておく)による温存療法で、痛みの軽減や炎症を抑える薬物療法も行います。また適正体重の維持をさせることも大事です。
外科的療法では原因となる尺骨かとう骨を短くする骨切り術や、肘突起をネジで止める固定術等があります。

先天性網膜萎縮症(せんてんせいもうまくいしゅくしょう)PRA
徐々に網膜が委縮し、最終的には失明する病気です。網膜は水晶体(レンズ)のさらに奥で、スクリーンのように像を映す大切な組織です。網膜に映された像は電気的な信号に変えられて脳に伝えられるのですが、この光受容器である網膜が進行性におかされていき、最後には失明してしまうのです。
先天性網膜萎縮のほとんどは成犬になってから発症致します。この病気は、痛みや不快感はないのですが、視力障害が進行して行きます。はじめは夜や暗い場所での視力障害(夜盲)が起こり、徐々に明るい日中の視力も低下(昼盲)が進み、1〜2年で視力が全く失われます。
この病気はゆっくりと症状が進行して行きますので飼い主様がいち早く気づいてあげることが重要となります。
歩行中に物にぶつかったり、足を踏み外したり、瞳孔が開いてたままになっていたら、お早めに獣医師さんの診察を受けて下さい。

水頭症
頭蓋骨(ずがいこつ)の内部には脳の組織が詰まっていて、その隙間には脳脊髄(のうせきずい)液が満たされた脳室があります。
何らかの原因で脳脊髄液が増加すると、脳圧が上がり脳が圧迫され、様々な、神経症状を現わします。
嗜眠・活動性の低下・発作・痴呆・行動異常などの意識障害・不全麻痺・斜視・眼球振とう・筋硬直などの運動障害・視力障害・姿勢反応異常などの知覚障害などです。
チワワ、ポメラニアン、パピヨン、プードル、ヨークシャーテリア、ペキニーズ等が発症しやすいとされています。
治療には、脳脊髄液の生成を抑えたり、排泄を促す内科的治療と、脳圧を下げるために、脳脊髄液をドレインを介して腹腔に流す外科手術があります。

突発性(真性)てんかん
脳の神経細胞に気質的な変化があるてんかんの発作とは区別して、原因がはっきり分からず、脳に気質的変化がないものがあります。
後者は遺伝的な病気ととして1〜3歳の若い時期から発生し、ジャーマン・シェパード、ビーグル、ダックスフンド、ゴールデン・レトリーバー、シェットランド・シープドッグなどによく見られます。
てんかんの発作が長く続いたり、頻繁に怒る場合は、死に至ることもある病気です。このような場合は抗てんかん薬の投与が必要となります。

先天性聴覚障害
内耳の聴覚器の異常により、片耳あるいは両耳で音が聞こえない、あるいは聞こえにくいという難聴の症状が現れます。
ダルメシアンでは発症が多く、ブルテリア、サモエド、グレイ・ハウンド、イングリッシュ・セッターなどに見られます。
この障害のある犬毛色が白く、虹彩の色が青いことが特徴です。難聴の犬は意外と多いと言われております。

腎臓の異形性、無形成
腎臓の組織の異常な発生と発達が進行していきます。子犬の時から腎機能低下は、慢性腎不全に移行し、完全治癒は望めませんが、腎臓に負担がかからないような低タンパクの食事と薬物療法で、進行を遅くすることが大事です。
若年性糖尿病
糖尿病は、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの量が少ないタイプ、インスリンに対する効果が悪くなるタイプに分けられます。
糖尿病は血液中のブドウ糖の量(血糖値)が増し、尿中に糖が排泄される内分泌疾患です。一般的な糖尿病は6歳以上の発生がほとんどですが、数%が1歳未満で発生し、これはインスリンの分泌量が少ないインスリン依存性のタイプで、若年性糖尿病といわれています。
この場合インスリンの注射を毎日していくと共に食餌療法と合併症にも注意していかなくてはなりません。
睾丸停滞(陰睾)
精巣は、胎児の時は腹腔の腎臓の後ろにありますが、しだいに移動し、そけい部を通り、陰嚢内(いんのうない)に入ります。生まれて数ヶ月以上たっても片側、あるいは両方の精巣が腹腔内に停滞し、陰嚢に存在しない病気を睾丸停滞といいます。
腹腔内の精巣は腫瘍化しやすく、女性ホルモンを分泌する病気になることも珍しくありません。腫瘍化してからでは遅いので、摘出手術が望まれます。
また、ドッグショーに出場する場合、この病気で睾丸がなければ失格となります。

先天性白内障
水晶体(レンズ)や、それを覆っている膜が白く不透明になり、光を感じにくくなる病気です。白内障は、老年性、若年性、糖尿病性、栄養性、外傷性などがあります。
老年性の白内障は、8〜10歳になると徐々に進行してゆく、大変多い目の病気です。若年性の白内障は、発生率は低いのですが、ほとんどが遺伝性です。
薬剤による治療では充分な効果が望めず、外科手術による眼内プラスチックレンズの移植が必要となります。

先天性の心臓病
心臓に送り込まれた血液は肺に入り、酸素をもらって再び心臓から全身の組織へと送り出されます。
その血液は、流れの順に各部位を挙げると。大静脈→右心房→三尖弁(さんせんべん)→右心室→大動脈尖→大動脈と流れていきます。
先天性の異常では、かつての血液の通り道である胎児期の血管や心臓壁の異常も加え、大変多くの病気があります。
障害の程度によっては、早期に死亡する子犬もいますが、軽い場合は無症状のことも多いでしょう。
診断は、聴診によって異常が発見され、レントゲンや超音波によって確定されます。動脈管開存と右大動脈弓遺存症が外科手術が施されますが、その他の疾病では対処療法として投薬が行われます。
運動制限にも気をつけて、心臓に負担をかけないよう注意してください。

大動脈狭窄症と肺動脈狭窄症
大動脈や肺動脈の根元が先天的に狭いため、血液の流れが妨げられます。狭窄(きょうさく)の程度によって発症の時期や症状がちがいます。

先天性新陳代謝異常
ベドリントン・テリアに起こる、食物中の銅が肝臓に貯留し中毒症状を起こす病気です。
肝炎から肝硬変へと進行する常染色体劣性遺伝の病気です。遺伝子検査による診断も可能です。銅の含有が少ない食事や処方食を与え、肝臓に対する薬物療法を行います。

腫瘍(しゅよう)
組織中の細胞は、絶えず新陳代謝をしていて細胞分裂ををします。このとき細胞の遺伝子に異常が起こると、異常な組織が増殖します。これを腫瘍化といい、この腫瘍の中でとくに悪いものを悪性腫瘍(ガン)と呼びます。
腫瘍はさまざまな原因で発生しますが、遺伝もそのうちの一つです。ある種の遺伝形質に他の因子(食事中や環境中の化学物質など)が作用して起きる、多因子性遺伝のことも多いでしょう。 
純血種の維持と改良の過程で、近親交によって固定された犬種には、腫瘍を起こす遺伝形質も受け継がれることもあります。
いずれの腫瘍も早期発見が第一で、体表にできるものは発見しやすいので、とくに気をつけて観察してください。早期発見すれば主要組織の切除と抗癌(こうがん)剤治療で治る場合もありますが、再発を繰り返すケースも少なくありません。

口蓋裂(こうがいれつ)
出生時には癒合すべき口蓋が閉鎖せず、口腔と鼻腔がつながっている先天異常で、授乳する時に乳汁が鼻に入って飲み辛く誤嚥(ごえん)を引き起こします。

後肢の狼爪
犬の前肢の指は第1〜第5指までありますが、後肢の第1指(親指)は退化して、無いのが正常です(ただし、セント・バーナードやグレート・ピレニーズでは生まれつき付いているのが正常です)。
この親指、つまり狼爪は、爪が伸びすぎて肉球に刺さったり折れたりするので切除術を施します。

臍(さい)ヘルニア
へその周囲の筋肉が、出生後閉鎖せず、内蔵の臓器が腹膜をかぶったまま脱出するのが臍ヘルニア(いわゆる出べそ)です。ヘルニアが大きくなる場合は、腸が脱出し通過障害を起こしますので注意してください。

そけいヘルニア
太ももの付け根はそけい(鼠径)部といい、そけい輪という血管や神経が通る穴があいていて、その部分の筋肉は、薄く破れやすい場所です。
筋肉が破れ、腸間膜や小腸、膀胱(ぼうこう)が脱出する病気が、そけいヘルニア(いわゆる脱腸)です。大きくなる場合は早めの治療が求められます。

眼瞼内反症
まぶたが内側に入り込み、まばたきするたびにまつ毛が角膜を刺激し、結膜炎や角膜炎を引き起こす病気が眼瞼内反症です。
重症な症例では角膜が白く混濁し、視力障害に陥ります。

眼瞼外反症
内反症とは反対に、まぶたがまくれ上がっている状態が外反遺伝性疾患の中でも、これらの障害は、外科手術で治療できる病気です。外見から簡単に見分けがつきますので、診断は容易と言われています。
手術の時期は病気によって違いますので、獣医師さんの診断、指示を受けてください。

心房中隔(しんしつちゅうかく)欠損症と心室中隔欠損
胎児期には、右心房と左心房の間の壁に卵円孔という穴が開いていますが、出生後には閉鎖して中隔の壁を形成します。
この穴が残ってしまう病気を心房中隔欠損症といいます。同じように心室の壁に穴や隙間があいている病気が、心室中隔欠損症です。
どちらの病気も、穴の大きさによって発症の時期や症状が違いますので、時には無症状のこともあります。